フォースをしていると、その時相手にしている観客の被暗示性がなんとなくわかります。

(フォースはマジックの技法で、演者が意図した特定のマテリアルを相手に選ばせること)

 

被暗示性≠被催眠性と考えていますが、両方とも定義が曖昧なのでここでの用法をざっくりと決めてしまいます。

被暗示性:暗示に対してのリアクションの良し悪し

被催眠性:催眠状態への入りやすさ

おそらくこの説明では間違っている可能性があるので、気になる方は他のところでしっかり調べてみて下さい。

(定義がブレブレなこと、被催眠性と被暗示性を分けないケースなどを発見するかと思います)

 

話を戻して…フォースと被暗示性ですね。

 

最近、私がレクチャーを出した「クラシック・フォース」というカードマジックの技法も一種のバロメーターとして機能します。

クラシック・フォースは手先の技術(スライハンド)と言語/非言語の指示によって相手にこちらの意図したカードを選んでもらうという技法を言います。カード・マジックの入門書にも載っている基本的な技法でもあります(基本ですが出来る人が少ないのも特徴)。

 

クラシック・フォースは100%成功することはありませんし、同じ人に連続で成功するとも限らないのですが、だからこそ反応(リアクション)によって相手の被暗示性を図ることが出来ます。

 

(ここからはクラシック・フォースを知らない人には上手く伝わらないかもしれません)

 

クラシック・フォースをしていると客(被験者)は3つのパターンに分けることが出来ます。

  1. 何回やっても成功する
  2. 最初の方は成功するが、途中から成功率が落ちる
  3. 最初から全く成功しない

 

経験上、1番目のパターンの人は被暗示性が高く、また催眠術に掛かりやすいケースが多いです。

というのも、この技法の根幹は客が演者の指示通りに動くか、或いは動かされるかによって成立するからです。

つまり、演者の言語/非言語的な指示に対して特に疑いもなく従いやすい人ということです。

 

2番目のケースでは、被暗示性はそこそこありますが、催眠術に掛かるかはやってみないとわからない傾向があります。

カタレプシーくらいまではすんなり入りますが、深い催眠状態にならないことも多々あります。

頭の良し悪しにかかわらず、何か理由を求めるタイプの人とも言えます。

このタイプの人は納得させるだけの材料や、信じ得る内容の情報を用意すると、被催眠性がグンと上がる可能性があります。

 

 

3番目のケース…この手のタイプの人は、個性が強い、極度に疑り深い、人の話をあまり聞かない、マイペースといった、言い様によっては悪いイメージを持たれる人だと思われます。

数は多くありませんが、個人差が激しく、理屈っぽい人だったり感覚最優先の人だったり様々です。

 

このタイプの人は被暗示性が低い傾向があり、催眠状態へ誘導することも前2つのタイプに比べかなり難しいかと思います。

古典的アプローチで言う25%の掛からない人も大体がこのタイプの人と言えるかもしれません。

 

 

ただし、このタイプの人は個人に合わせたアプローチをすれば催眠状態へ導くことが出来ます。

掛かり方が典型的では無いことが多く、軽トランスでの兆候(カタレプシーなど)はあまり無いくせに、中トランスでの反応(感情、嗜好の変化など)ははっきり起きるということがあります。人によっては幻覚を見るような深トランスまで入る場合もあります。

 

2番目のタイプは最初の導入に対して反応が良いのに対して、3番目のタイプは暗示自体が入りにくいことが多いのですが、3番目のタイプの方が一旦誘導が成功し始めると2番目に比べより深い催眠状態になるケースが多いように感じます。

(そもそも3番目のタイプの人の方が遥かに少ないですし、全体的に母数不足なのでしっかりとして統計ではなく、あくまで経験による感覚です)

 

 

ちなみに、私が最も確実な選り分け方だと思うのはメンタル・フォースを使った実験です。

メンタル・フォースは非言語の暗示をベースにもので、相手に特定の数字や単語を思い浮べてもらう技法なのですが、ほとんど催眠術と変わりません。(非言語がベースですが、言語的な暗示も使います)

ミルトン・エリクソンの記録などを読んでいても、言い回しや動作でクライアントの意識を誘導している箇所が何度か見受けられますが、それは私から言わせるとメンタル・フォースそのものです。

 

 

発展の形としては…

クラシック・フォース → メンタル・フォース→ 催眠誘導

といった感じで、右に行くに連れ暗示の占める割合が大きくなります。

 

元々クラシック・フォースから始まり、メンタル・フォースを覚えたので、催眠術に手を出すのは自然な流れでした。

フォース系が得意な人は最終的に催眠術に片足、或いは両足を突っ込むことになるのではないかと思います。

(ダレン・ブラウンは逆に催眠術からキャリアが始まっていますが、やはり催眠術という基礎があるからこそのフォースという感じがあります)

 

メンタル・フォースは成功率的に信頼性が低いので、アウト(逃げ道)をしっかり用意するか、実験的なニュアンスで使うことが多いです。

特に後者の実験的に使用するケースでは催眠術と相性が良いので、最初から催眠術をする予定がある場合は積極的に取り入れています。

 

特に観客の人数が多いときはメンタル・フォース的な方法を使うと、前に出てもらう人を選びやすくなります。

ルーク・ジャーメイが最近出したFOLIE A DEUXというレクチャーノートにも催眠術的な手法を使って客を選び出すという方法が書かれていましたが、ショー催眠のように速度が要求される場では非常に強力な選別方法だと思います。